子どもに自立させたければ経営者こそが自立すべし
「自立学習」と言えば、生徒(子ども)を自立させるための教育だと誰もが思うでしょう。
しかし今回インタビューした南大塚スタディクリニックの塾長であり代表の若菜氏は、重要なのはまず塾経営者自らが自立することだと言います。創塾してから試行錯誤を繰り返してオリジナルのやり方を構築してきた若菜氏に「自立した」塾経営のありかたをお聞きしました。
若菜 亮樹(りょうじゅ)氏
プロフィール
南大塚スタディクリニック塾長
1987年から25年間の塾講師の経験を経て2012年2月、川越市内に南大塚スタディクリニックを開業。
学習塾勤務時から「教え過ぎは子どもをダメにする」という思いが強くなり、開業当初より、1人で生徒全員の全教科の指導にあたるべく自立学習指導を基本に据えて指導を行う。
2016年1月、高校入試直前にくも膜下出血を発症し入院・手術。入院5日目より病室からの遠隔指導と生徒の自立学習の定着によって3週間後に退院・復帰した時には、生徒のほぼ全員が教室で勉強しながら待っていてくれた。その年の12月には教室定員の50名を突破し、現在に至る。
趣味はピアノ演奏。
http://www.study-clinic.com/
度肝を抜かれた!自立学習
―― 「SelfeeWin」を導入されたのはいつからですか?
若菜氏 2012年、創塾と同時期に導入しました。それ以前は別の塾で講師として働いていて、国語と理科は長く担当していましたが、もともとは社会だったり、数学もたまにやったりという感じでした。
しかし、組織ではなく自分でやったほうがより子どもたちの指導にエネルギーを集中できると思い、独立を考えるようになりました。そのときに、自分でやるなら全教科を自分の責任で指導したいという思いがあって、そのために使えるシステムが必要だということで、SelfeeWinに決めました。
―― どのようにしてSelfeeWinを見つけたのですか?
若菜氏 ネット検索ですね。キーワードは「自立学習」でした。
当時、まだ勤めていた頃ですが埼玉県内の出版社でも似たような塾教材は出されていたんですが、どうも使い勝手がよくない、自由度がないなと思っていました。ひとりひとりに合わせた教材とうたっていても全部既製品。それを生徒ひとりひとりに合わせて作り直していると時間がいくらあっても足りないですからね。
補習用の教材は全部手作りしていたときもあって、それはいいことだとは思うのですが時間とエネルギーがかかりすぎました。ですから、ボタンを押せばポンとプリントが出てくるようなものがないかなぁと、15年くらい考えていたんですよ。
―― SelfeeWinを導入している塾のHPなどを見られて実際に授業を見学などされたそうですね。
若菜氏 そうですね、度肝抜かれました。
子どもたちの進度表(≒カリキュラム)を最初に用意して、子どもたちがそれに基づいて自分でプリントを出して、自分で確認していくという、とそのやり方が驚きでした。つまり、子どもたちが次に何をすればいいのかをわかるようにしてあげるということですね。
どこまで子どもに任せるかという管理の問題はあるにしても、子どもたちは自分で選んで、自分のペースでやっている。基本的なSelfeeWinの使い方はこれなんだなと思いましたね。
試行錯誤の末に作り上げた自立学習スタイル
―― その後、導入されてからはいかがでしたか?
若菜氏 塾を始めて最初の1ヶ月は誰もこなくて、ようやく1ヶ月後に1人来ました。その後、体験生がたくさん来たんですけど、そのときは私が子どもたちのプリントを印刷してあげてたんです。すると、プリントの出力待ちになっちゃってうまくいかなくて、けっこうな人数逃げられちゃったかなという感じでした。
その後1年くらい試行錯誤して辿り着いたのは、バーコードのリストを作って子どもたちに渡し、私の方ではよほどのことがない限りプリントはつくらないという方法です。
テストごととか、その都度リストを中学校別に作ります。あとは子どもたちが自分の状況に合わせてこの中からプリントを出力して進めていけるようになっています。
―― では先生のお仕事は準備に比重が置かれているのですね。授業が始まると先生の役割はどのようになるのですか?
若菜氏 勉強に身が入らない、集中できない子がいたら声をかける。あとは質問に答えたり、採点したりですね。他には、つまずいているところがある子は直接呼んで解説をしたりという感じで、SelfeeWinがあれば1人で回せますね。
以前オリジナル教材を自分でたくさんつくっていたときは、それを5教科やるなんてとても時間が足りません。でもSelfeeWinはプリントのバーコードを編集するだけで、たくさんある教材から必要なものを選んでカスタマイズできますから、この機能は抜群にいいです。
今は各教科ごとに8段階程度にレベル分けして、生徒が自分でレベルを選べるようにしてあります。
―― 生徒さんが自分でレベルを選ぶのですか?
若菜氏 そうです。おもしろいですよ。偏差値40程度の子が、一番難しいものをいきなりやって「わかりません」って持ってきたりする。「それはできるわけないだろ、こっちからやりなさい」って会話ができるんです。
―― 自分で選んだ結果うまくいかないという経験も大事ですよね。そこが先生の腕の見せ所というわけですね。
若菜氏 そうです。それで自分のレベルを認識するし、「できるレベルからやらないと力はつかないよ」と教えています。自分はまだまだだと生徒自身が気づけば、自分の偏差値はいくつだからここからやろう、ここはできたから次のレベルにいこう、とか考えるようになる。そこまで自分で選べるようにしています。
苦労した経験が後から生きてくる
―― 先生のなかには、なかなか子どもたちに任せきれないという葛藤があると思います。若菜先生はどうやって今のようなやり方に踏み切れたのでしょうか?
若菜氏 私も最初は葛藤がありましたよ。子どもに全部任せちゃっていいのかと。でももう今では任せきりです。任せられる子がいると、みんなその子を真似てくれるんですよ。そういう素養のある子をそう育てたという部分もあるのかもしれないですが、それが伝統になっていくのかなと思います。
集団授業という形はとってないですが、いろんな中学校・小学校から来たいろんな学年の子たちが教室のなかでお互いを見ていて、誰かがこういうやり方をしたら点が良かった、じゃあ自分もやってみようかなってなってくれればいいなって思いますね。
―― 若菜先生は、ご自身のやりたかったやり方、ありたい姿を実現されているように見えます。ご自身ではどう思われますか?
若菜氏 独立時に、自立学習というスタイルに合う教材としてSelfeeWinを選びましたが、子どもを自立させようと思ったらまずは塾の経営者が先に自立してなきゃだめだろう、と考えました。つまり、教材は教材会社に任せきりとかじゃなく、なんでも自分でやらないとだめだと思うんです。
SelfeeWinはシステムとか機能とかすばらしいところがたくさんありますけど、何よりすばらしいのは自分自身がSelfeeWinを使うことで自立できたってことなんですよ。最初の2年くらいは、このツールはどうやれば一番使い勝手がいいかとか、どういう使い方ができるかとか、生徒が帰った後もずっといじって格闘してたんですよ。そうやっているうちに、気づいたんですよね。
―― ありがとうございます…!やはり、初期の段階で試行錯誤された方がとても満足して使い続けてくださっている印象です。
若菜氏 生徒をどう集めるかということもそうですけど、最初からうまくいかなくても苦労した経験があとあと絶対生きてくると思います。SelfeeWinを使って感じているのはそういうことですね。